究極の劇場

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 以前から看板だけは目についていた劇場があった。

一度は行ってみようと思いつつ、なかなかその機会に恵まれなかった。

ある日ふとその気になってその劇場に足が向いた。


 入り口の外に椅子をだしておばさんが二人でしゃべっていた。

私が近づくと

「若い子いるよ、見て行かない?」と話し掛けてきた。

「いくら?」

「2,500円」

なんとなくいやな予感がしたがとりあえず入ってみることにした。


 劇場に足を踏み入れて私はのけぞった。

お客は誰もいなくて私一人。度胸を決めてかぶりつきの席に座った。

まもなくショーが始まって私は再度のけぞった。

出てきたのはさっき入り口のところで話し掛けてきたおばさんだった。

振り返ってみるともう一人のおばさんが照明をやっていた。


  極めつけはベッドの最中、ステージを“猫”がよたよたと横切って行った。


 数日後、その劇場の前を通りかかったがすでに劇場はなくなっていた。

今から考えると私が最後のお客だったのかもしれない。

[舞太郎](1996.04.17)


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