プロのダンサー

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 週末の夜だというのに劇場にも行かず、自宅でごろごろテレビを見ていた。

音楽番組を何気なく眺めているうちにふとKちゃんのことを思い出した。

もう何年も忘れていた人だ。だんだん記憶が甦ってきた。


 10年近く前の大晦日の夜だった。

私はひとりでカップラーメンを啜りながら紅白を見ていた。

すると突然電話が鳴った。A子からだ。

「なにしてんの〜」

「カップラーメン食べながら紅白見てた」

「大晦日の夜にひとりでそんなことしてるの」

「勝手だろ」、痛いところをつかれて少しふてくされた。

「あのさぁ〜、○○○(ディスコの名前)で盛り上がってんだけど、

 今から出てこない?」

「面倒くさいなぁ」

「紹介したい人がいるんだけど・・・」

この言葉に弱い私は「すぐ行く」と答え、

食べかけのカップラーメンを残したまま家を飛び出した。


 その時紹介されたのがKちゃんだった。

すこし話をしたあと、Kちゃん、A子、私の三人でフロアに飛び出し踊りはじめた。

しばらくして、Kちゃんのダンスに驚かされた。胸がドクドクした。

うぉ〜!!という迫力がビシビシ伝わってきた。ダンチにうまいのである。

A子だって、普段は目立つ存在なのに、格が違うのである。

混雑でごった返している中で、彼女ひとりがキラキラ輝いていた。感動モンである。

A子の耳元で私はつぶやいた。

「何者?」

A子はニヤリと笑って「プロのダンサー」と答えた。


 後でもう一度聞いたところ、

アイドルなんかのうしろで踊るダンサーをやっているとのことだった。


 テレビを見ていて思い出した昔の他愛もない記憶だったが、

日夜、たくさんの“プロのダンサー”のダンスステージを

見ている現在の自分の状況を考えてみると、

この時の感動の記憶が潜在的に残っているのかも知れない。


 KちゃんやA子は今頃なにやってるんだろう? 


[舞太郎](1996.10.05)


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