もうかなり昔に活躍したある姐さんと話をした。 子供を育てあげた話やら昔の思い出を聞かせてくれた。 私は、もちろん彼女のステージを見たことがない。 生まれる前だったというのは大袈裟かもしれないが、 すくなくとも彼女が活躍したのは私が劇場に入れる年齢に達する前だったからだ。 彼女は昔話をするのが楽しいらしくて、 当時の花魁姿の写真なんかを見せてくれたりして話が弾んだ。 なにかの拍子で半分お世辞を込め、 「姐さん、まだやれるんじゃないの。ステージに立つ気はない? 一度でいいから見てみたいな」と私が言うと、 「冗談言うんじゃないよ、できるわけないだろ」と笑った。 「でも、姐さんぐらいの歳の人で頑張っている人もいるよ」と 私も笑うと、ちょっと間をおいて、 「そうねぇ、日舞なら少し踊ってみたい気もする。 踊れるかしら」と ポツリと呟いた。 彼女の目を見るとキラリと光っていた。私は何だかゾクッとした。 茶化していたつもりが彼女の本心を引き出してしまったようだ。 彼女の心は現役なのだ。私は茶化しの笑いから嬉しさの笑いに変化した。 本当に彼女のステージを見たくなった。 彼女に提案した。 「年に一度位、姐さんたちの年代の人ばっかり集めて、 同窓会ステージでもやったら? 恐いもの見たさで人が集まるかも知れないよ」 「馬鹿言ってんじゃないよ。 そんなこと何処の劇場もやってくれないよ・・・・・・。 でも面白そうね。やるんなら○○姐さんも呼ばなきゃ」などと大笑いしながら、 まんざらでもなさそうだった。 伝説の姐さんを集めての同窓会ステージなんて企画、 やっぱりマニアにしか受けないかなぁ。
[舞太郎](1996.11.24)