舞太郎の期待

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 「去年1年間でいちばん話をしたのは舞ちゃんかもしれない」

踊り子さんとの会話の中で出てきた言葉だ。本当かどうかは分からない。

そう言われるとそうなのかもしれないと思った。

彼女達は劇場でいっしょになった他の踊り子さんと、

その週はかなりたくさん会話をするけど、年に何度もいっしょになる訳でもなさそうだし、

仕事の関係の人は事務的な短い会話なのだろう。もちろん個人差はあるけど。

だから私みたいな客との会話が多いということもまんざら嘘ではないような気がする。

この言葉ひとことで彼女たちの人間関係の一端を垣間見たような気がした。


調子にのった私は

「それって彼氏より私と話してるってこと?」と余計なことを言い出した。

「だって、ここんとこしばらく彼氏いないもん」

「それじゃあ、2月14日は金曜日だし、予定あけとこうか?」

「・・・・・」

彼女はしばらくなにか考えている様子の後、

「あっそうか、バレンタインデーね。

 ここ数年そんな行事のことも忘れてた、そうかそうか」

こんな大切な日を忘れているなんてまったくどういう事なんだろう。


「じゃあ、その日にどーしても私に会わなくちゃいけない用事を思い出したら

  早めに連絡してね。こっちだっていろいろ忙しいんだから」と私は彼女に言った。

「あははは! 分かった連絡する」


 連絡がこないことは確実だ。

  しかし、義理チョコぐらいはくれるかもしれないと、かすかな期待をする舞太郎であった。



P.S.この文章を書いた後、別の踊り子さんに2月14日は短時間でもいいから

        劇場に必ず顔を出すように言われた。

 たとえ義理でも喜ぶべきか・・・。 やっぱり義理じゃないのがほしい。

[舞太郎](1997.02.12)


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