伝える

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 M姐さんと話をした。

彼女は私の大好きな踊り子さんだが今までほとんど話したことがなかった。

なんとなく恐そうで近寄りがたかったというのが本当の理由だ。

何度か同じ飲み会に出席したりもしているが、

いつも挨拶程度でそれ以上の会話はなかった。


 先日劇場のロビーでテープの準備をしていると、M姐さんはお客としてやってきた。

私が持っていた色とりどりのテープを見て、

「おっ、次はKのステージ?  Kのステージから入るよ」とおっしゃった。

かなり飲んでるみたいでフラフラしていた。


 やがてKちゃんのステージが始まり、M姐さんは空いている席へ、

私は反対側の壁際に立った。

ふとM姐さんの方に視線をやると彼女は眼鏡をかけ、

なんとも不思議な表情でステージを見つめていた。

厳しい顔でもなく、優しい顔でもなく、本当に形容しがたい表情なのである。

確かなのはM姐さんの目はもう酔っていなかった。


 何人かの同じ事務所の踊り子さんのステージを観た後、彼女はロビーに出てきた。

そこで私との会話が始まった。


いろいろ話しているうちに、


「今やってる、私のステージどう思う?」と聞かれた。


「あの衣装、2年ぐらい前に一度使ったやつですね。

  あのステージ大好きだったんですよ。それを思い出してとても嬉しかった」


「えっ、観たことあるの? 3年以上前に使ったものだけど・・・」


「もう3年もたつのですか。あのステージ、脳裏にしっかり焼き付いていますよ」


 私は踊り子さんに対して、絶対にお世辞を言わない人間である。

そんな私の口から続いて出てきた言葉は、


「M姐さんは、いつもいつも私の期待を裏切らない数少ない踊り子さんです!!」


 実はこの言葉、彼女のステージを観るたびに浮かんできていたものである。

やっと御本人に伝えることができた。

御本人はかなり酔っておられたので聞き流されたかもしれないけど・・・・・。

[舞太郎](1997.04.07)


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