1年程前のことである。 気に入っている踊り子さんに花をプレゼントした。 もちろん話したこともない踊り子さんにである。 いつもは遠くから見ているだけだったが、 なぜかその日は思い立ち、花を持って劇場へ向った。 オープンの時、彼女の素晴らしいステージの余韻を感じながら、 私は彼女に花を差し出した。 物凄く緊張した。ところが私が予期していたものとは違う事態が起こった。 彼女の動きが一瞬止まり、何かを考えながら私の方を見つめていた。 顔は笑っていたが何か変だ。 私の方も混乱してしまい「応援しています」と口に出すのが精いっぱいだった。 ステージからの帰り際、舞台袖に入る前にもチラリと私の方を見ていた。 フィナーレの時も私の方をチラチラ見ていた。やっぱり何かおかしい。 失礼なことでもしてしまったのか・・。 気にはかかったが数日後には私もこの事を忘れた。 後日、他の踊り子さんとの会話の中でその謎が解けた。 私が彼女に花を渡したその日は公表されていない彼女の本当の誕生日だったのだ。 大当たり。 彼女にしてみれば、知らないお客が、 自分の本当の誕生日に突然花を持って現われるなんてとても怪しく感じたのだろう。 その時の情景を思い出し、頷きながら苦笑した。
[舞太郎](1997.06.05)