このところ睡眠もまともにとれないほど忙しい毎日を送っている。 昨日の午後6時頃、仕事もひと区切りついたので、 ホテルに戻ってひと眠りしようかと思っていたら携帯が鳴った。 「もしもし」 聞きなれない声だ。 「以前、○○でお会いしたTと申しますが・・・」 私は一瞬耳を疑った。 「えっ!! T姐さんですか? ご無沙汰しております」 T姐さんとは一度だけお会いしたことがある。 しかし、挨拶程度の会話をしたのみである。 それにステージだって2回しかみていないし、もちろん私に電話してきたのも初めてだ。 (どうしたんだろう? なぜ私に・・? 気まぐれだろうか?) 頭の中で疑問が渦巻いた。 なんだか様子も変だ。 「今どちらにいらっしゃるのですか?」 私の問いに対する彼女の答は、隣県にある劇場であった。 とりとめもない会話をして携帯を切ったがすっきりしない。 考えたって仕方がないからとにかくその劇場に行ってみることにした。 彼女のステージをみたいというよりは彼女が私を必要としているように感じた。 こういう理由で劇場へ行くのは、 私の主義に反するが「今回は特別」と自分自身を納得させた。 劇場に着いて彼女と会ったとき、私の予感が当たっていたことを確信した。 彼女の姿は弱よわしかった。 「すみません。こんなにすぐに来てくださるとは思いませんでした」 「たまたま来られる距離のところにいたからです」 とりとめのない会話が続く。 本当は「なにかあったんですか?」と 単刀直入にききたかったが、こちらからきくのは気が引けた。 そのうちに彼女の方がポツリと口にした。 「とてもブルーな気分になっちゃって・・・・」 あの偉大な姐さんからこんな言葉が出てくるなんて、胸が熱くなった。 彼女を笑わせようと 「私と人生をやり直しますか?」と言ったら 「こんな私でもいいですか?」と彼女はこちらを見た。 そして、思わず二人して笑った。 その後、彼女のステージをみた。幾分元気を取り戻したようだ。 私は「頑張れ、頑張れ」と心の中で呟きながら手を叩いた。 たいしたことはできないけれど、私にできる心からの応援であった。 それは決して大きな音ではなく目立つ手拍子ではなかった。 オープンのとき、彼女は自分の右手のひらの汗を衣装でゴシゴシ拭いた後、 私の前に差し出した。 私もそれに応えて手を差し出した。 心の中で呟いていた言葉を口にしながら・・。 昨夜は他の人のステージを含めてストリップを楽しむという状況ではなかった。 T姐さんを応援するためだけに劇場へ行った。 たまにはこういうのも良いか・・・今回は特別なんだ。 T姐さんは自分の追っかけさんやお客さんにではなく、 なぜ私に電話してきたのだろう? 今回は特別なんだ。
[舞太郎](1997.08.08)