Kちゃんと渋谷のとんかつ屋で夕飯を食べていたら、 茶髪のお兄さんが近づいて来て私の方を気遣いながらKちゃんに、 「Aさんじゃないですか?」と声をかけた。 Kちゃんと私はびっくりして顔を見合わせた。 AというのはKちゃんの本名である。 たまに芸名で話し掛けられることはあるが本名のケースはめったにない。 とまどっているKちゃんに対して彼は自分の名前を言った。 Kちゃんの表情がみるみる笑顔になった。中学時代の友達だそうだ。 彼はその後、簡単な挨拶をして去っていった。 ほんの一瞬のことだったがKちゃんはとても感激したようだ。 「何年もたっているし化粧しているのによく分かったよね」とか、 「東京で田舎の幼なじみに会うなんて・・」とか、 「同窓会とかにわざわざ行くわけないし、 こういう偶然でしか会うことのない人達だよね」とか、 「みんなで埋めたタイムカプセル、どうなっちゃったかな?」とか、 次から次へと言葉が出てきてなんだか楽しそうだった。 「あの子、わたしのことどう思ったかな? OLでもやってるように見えたかな? あははっ!! それはないよね」 Kちゃんはちょっと考えて、 「あの子、わたしの仕事を知ったらなんて思うだろう?」と言った。 「そりゃ驚くだろう」と私はこたえた。 「そうよね、驚くよね。でもこういう偶然ってなんかいいいね」 「うん、いい感じ」 なんとなく温かい気分になった。
[舞太郎](1999.1.17)