先日、関東の劇場にふらっと出かけた。 早朝から入り、一回目を見終わったとき、ちょっとだけ違和感を覚えた。 そこの劇場らしからぬ香盤のように思えたのだ。 二回目が始まったところでそのまま劇場を後にした。 1時間ほどしたら携帯が鳴った。さっき行った劇場にのっていたAちゃんからである。 「信じられない、なんで帰っちゃうの? 2回目に出ていったらいなんだもん、ホント信じられない」と、叱られてしまった。 「ちょっと用事があったから・・・」と適当に謝って、切ろうとしたところ、 「あっ、ちょっと待って、訊きたいことがあるんだけど・・・」と引きとめられた。 「あのさぁ、わたしの次に出ていたお姐さん知ってる?」 Aちゃんは不意の質問を投げかけてきた。 ちょっと、頭の中で思い浮かべながら、 「Nさんでしょ、どっかで見たことあるような気がするけど、 知らない名前だし・・・」とこたえた。 「ううん違うよ、Nさんっていう人の穴埋めで来てるらしいの。 香盤ではそのままだけど、本当は違うって。 そのお姐さん、もう引退したからって、本当の名前を教えてくれないんだ。 ちょっと気になって、舞ちゃんなら分かると思って訊いたの」 Aちゃんの言葉を聞きながら、私の頭の中はフル回転した。思い出せない。 どこかで見たことある。あの貫禄、あの動き、誰だっけ? なんだかとても懐かしい印象を持った。しばらく沈黙が続く。 Aちゃんのちょっと気になるが、私のすごく気になるに移ってしまった。 Aちゃんがデビューして2年、たぶんそれ以前に引退した人だろう。思い出したい。 「あのさぁ、Hの所属だったらしいよ」 その言葉にスパークが散った。名前がポンッと浮かんできたのである。 「Wさん!!」、AV出身のビッグネームである。 「さっすがぁー、舞ちゃん、たいしたもんだ!!」とAちゃんの誉め言葉が続く。 一度名前を思い出した後は、次から次へとステージの思い出が蘇ってきた。 口にこそ出さなかったが、その後の消息もきいていたことを思い出した。 たまたま、一度だけ穴埋めで頼まれただけなのか、 これをきっかけに古巣にもどるのかは分からないが、 Wさんの久しぶりのステージに巡りあった偶然に感謝したい。 すごく得した気分になった。 香盤に対する私の違和感もスッキリした。
[舞太郎](1999.11.02)