家族と近所のスーパーに行った。 家内が食料品の買い物をしている間、 5才の息子は滑り台とかのある子供の遊び場で遊んでいた。 私はもうすぐ2才になる娘といっしょに50mほど離れたベンチに座っていた。 遊び場では10人ほどの子供が元気に走りまわっていた。 ぼんやり眺めていると二人の男の子が接触し、一人が転んでしまった。 転んだ子は持っていたプラスチック製のおもちゃが壊れてしまったようで、 大声で泣き出した。 どうやら買ってもらったばかりのおもちゃらしい。 もう一方の子はやばい雰囲気を感じたのか、すーっと、どこかへ消えてしまった。 他の子も数人消えてしまった。最近の子は要領が良い。 私の息子はというと、泣いている子に近づいて行ってなにか話し掛けている。 するとどこからか、泣いている子の父親がやってきた。 そしていきなり大声で、 「だれにやられた? どいつだー!!」と喚き出した。 ちょっとその筋の人って感じでサングラスをかけた恐そうな父親だった。 残っていた5名ほどの子供に向かって、 「お前か!! それともお前か!! 」などと怒鳴りまくっていた。 まわりにはお客や店員もたくさんいたがあまりの剣幕に圧倒され凍りついていた。 その父親は子供がいじめられたというよりは、 自分が買ってやったおもちゃが壊れてしまったことで切れてしまったようだ。 関係のない女の子もひとり泣き出してしまった。 一番近くにいたわが息子は哀れなもので集中砲火にさらされていた。 首を横に振りながら一生懸命になにかを説明しようとしている。 やさしいけど要領が悪いところは誰かに似ている。 収拾がつかなくなってきて(ちょっとやばいかなぁ)と感じて、 娘を抱きかかえながらその父親のところに行った。 息子は私の姿を見つけると後ろから腰のあたりにしがみついてきた。 よほど恐かったのだろう。 私は、 「たまたま、遠くから見ていたんですけど、 黄色いTシャツの子がお宅のお子さんとぶつかりました。 その子はここにはもういません」というような説明を適当にした。 (本当は赤いTシャツの子だったけど・・。) 怒っていた父親は黙って私の話を聞いていた。 すると今度はいきなり、泣いている自分の息子を蹴倒した。 その子はもんどりうって倒れた。一瞬のことで私は何もできなかった。 ひっくり返ってさらに大きな泣き声をあげている自分の息子に向かって 「お前が調子にのってふざけているからいけないんだ!!」と 大きな怒鳴り声をあげながらすたすたと立ち去ってしまった。 私は倒れているその子を抱き起こしながら、 「だいじょうぶ?」と声をかけると、 その子は首を縦に振りながらそろそろと立ち上がり、泣きながら父親の後を追った。 子供に「ふざけるな」って言ったって無理な話だし、 自分の怒りを弱いものに向けるなんて許るせない。 後味の悪い怒りが込み上げてきた。
[舞太郎](1998.10.13)