元旦の朝、車で遠方の劇場へ向かった。 途中でトイレに行きたくなってキョロキョロしていると、ホームセンターが開店していた。 私は迷わず、そこの駐車場に入った。 トイレは店内にあるようなので入り口から入ろうとしたら、 ハッピを着た店の人に派手なバケツを手渡された。 「なんですか?」と聞くと、「先着500名様へのプレゼントです」とこたえた。 私はそのバケツを手に提げてトイレに入った。 用が済んで帰ろうとしたがはたと考え込んでしまった。 なにも買わずにこの派手なバケツだけ持って、 あの出入り口を通過するのはなんとなく気が引けたのだ。 しかたがないので犬のえさ(10kg入り)を3袋買った。 ちょうどなくなりかけていたのを思い出したからだ。 レジでお金を払うと、 「3000円以上のお買い上げなので、 カウンターでくじを引いていってください」と言われた。 私は言われるままにくじを引いた。 三角くじを破った担当の店員達は 「おめでとうございます。大当たりです。 こちらが賞品になります」と言っていっせいに拍手した。 渡されたのは産地直送札幌ラーメンセットと 書かれた大きなダンボールの箱だった。 私がボーゼンとしていると、 「ただいま、大当たりがでました」などと、店内放送まで始まった。 私は派手なバケツと、30kgの犬のえさと、 産地直送札幌ラーメンセットの箱を載せたカートを押し、 急いで店を出て車に乗り込んだ。 なっ、なんなんだ、この展開は。私はトイレに行きたかっただけなのに。
[舞太郎](1998.1.6)