毎年この季節になるとふと思い出す。 12年前の4月8日、死のダイブを実行したユッコのことだ。 馴れ馴れしく“ユッコ”と呼んでいるが、私は彼女のファンであったわけでもないし、 もちろん親しかったわけでもない。 当時トップアイドルとして活躍していた彼女のことは名前や歌ぐらいは知っていた。 その程度であった。 あの日、テレビで事件を知った時も、私は(大変なことになったなぁ)と 感じた多くの人たちのひとりであった。 しかしその翌日、テレビのワイドショーで、 彼女の子供時代の写真が映し出された瞬間、私は凍りついた。 忘れかけていた遠い記憶の中に彼女が突然現れたのだ。 (この子知ってる・・・・) かすかな記憶が鮮明に蘇えってきた。小学校の校庭、季節は・・・秋頃かな。 南側にあった木造校舎前の上り棒。彼女はその下にいた。 私は彼女をぼんやり眺めていた。 (まさかなぁ)という思いがあった。 (夢と現実がごっちゃになっているんだ)と自分の記憶を否定した。 数日後、彼女の追悼のさまざまな本が発売され、 私も気になっていたので数冊買った。 彼女の履歴をみて、やはり自分の記憶は間違いないと確信した。 彼女は私と同じ小学校出身で自宅もすぐ近くだった。 そんなこと、それまでまったく知らなかった。 その後、引き寄せられるように彼女の書いた小説を読んだり、 CDを買って聞いたりして彼女のことをいろいろ知るようになった。 皮肉なもので私はユッコが亡くなってからファンになったのである。 12年前のこの一連の出来事は私にとってもやもやとした不思議な体験であった。
[舞太郎](1998.3.30)