招待券

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場内からロビーに出た。何かを踏んづけた。

足元を見ると、かなり固形物の残ったゲッチャンがそこにあった。

酔ったお客が吐き出したものだ。


従業員に知らせ、いっしょに片づけた。

こんな時は従業員に任せればよいのだが

私としては他の犠牲者が出るのが忍びなかったのではやく始末したかった。

「すみませんねぇー」と若い従業員は言った。


しばらくたってロビーでたばこを吸っていると

先程の若い従業員が近づいてきて言った。

「ここにはよく来られるんですか?」

「ときどきですけど、寄らせていただいてます」

「よかった」と言いながら彼は私の上着のポケットに封筒をねじ込んだ。

そして「ないしょだよ」と言った。


後で中身を見てみると劇場の招待券が2枚入っていた。


嬉しかった。

タダで劇場に入場できるということより、知らないお客に対する

この従業員の心遣いが無性に嬉しかった。


[舞太郎](1997.11.19)


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