「あんたさぁ、 わたしがなんにも知らないとでも思っているの?」 Aは鬼の首を取ったように自信満々で言った。 (こいつ、なにを感づいたのだろう? Bちゃんに花を贈ったことかなぁ、 それともCちゃんと飲みに行ったことだろうか?) Aが知ったら機嫌を悪くするようなことは 普段からいろいろやっている。 Aの顔を覗き込みながら探りを入れた。 「誰かからなんか聞いたの?」 「そうだよ」 やっぱり・・、 最近わたしのことをいろいろ言う人がいるようだ。 「なにを聞いたんだよ、 もったいぶらないでちゃんと言えよ」 「思い当たることあるでしょ?」 「思い当たることがありすぎるからどれだかわかんないんだ」 「ばーか、まったくぅー、なんて奴だ。 叩けばほこりが出てくるとは思ったけど、 ここまでやるとは思わなかった」 「だからなんだよ」 Aは大きく息を吸い込んでいっきに言った。 「あんたさぁ、 Dちゃんにダイヤの指輪を買ってあげたんだって? わたしには『金ない』って いってるくせにそういうことするんだ」 これを聞いてわたしはホッとした。 完全にガセだとわかったからだ。 「Dちゃんの名前は知ってるけど、 直接話したこともないよ。 どこからそんな話が出てくるんだよ。 ボクもそうだけど、相手だって迷惑だよ。 だいたいダイヤなんて 今のボクに買えるわけないだろう?」 「シラをきるつもりなの?」 「だからガセだって言ってるだろ。 誰からそんなつまらない情報を仕入れてきたんだ?」 「絶対信頼できる人から聞いたんだから。 正直に話しなさい」 わたしは腹が立ってきた。 「信頼できる人って誰だよ? いい加減にしてくれよ」 Aは再び大きく息を吸い込んで言った。 「本人だよ、Dちゃんがわたしにそう言ったの。 おまけに 『一日になんども電話かけてきてわたしをくどくのよ』 とも言っていた。 あんた、この話を聞いた時のわたしの気持ちわかる? そういうことしてるならそうだって、 なんでわたしに話さないの? このまま別れるつもりなの?」 わたしは言葉が出てこなかった? かなり狼狽してしまった。 (なんで、なんで・・・・・・? こんな間違いがおこりえる可能性は? なんか変だ、Dちゃん? やっぱり知らない。) Aはたたみかけるように言った。 「なに、あせっているの? さぁ、ちゃんと話して・・・・」 わたしはそれから30分ぐらい、 勝ち目のない説明を繰り返した。 わたし自身が状況を理解できていないので説明に説得力がない。 「そんなに信用がないならDちゃんをここに呼んでよ。 なにかの間違いだとわかるからさぁ」 わたしも意地になった。 身に覚えのないことでペナルティを食らうのは納得できない。 「もういいよ、 Dちゃんはわたしとあんたのこと知らないから ここに呼ぶわけにはいかないよ。 あんたのこと信用してあげる」 そう言われてもすっきりしない。 わたしがぶつぶつ言っていると、Aもつぶやいた。 「ダイヤの話はわかった。 でも、完全に容疑が晴れたわけではないからね。 あんたがなんにもしていないのに Dちゃんがそんなこと言うわけないし・・・」 「おい、全然信用していないじゃないか!! くそっ!! どうすりゃいいんだ!!」
[舞太郎](1998.05.18)