Aちゃんが死んだ。ひとりで死んだ。 ある日、Aちゃんは仕事に来なかった。 みんなは口ぐちに 「あいつ、また穴をあけて飛びやがった」と言った。 そして誰もAちゃんをさがさなかった。 Aちゃんはずっと部屋にいた。 どす黒い染みの上で寝ていた。 ひとりで寝ていた。睡眠薬の瓶もあった。 タンバリンの音。飛び交うリボン。 あんなにキラキラ輝いていたのに、 何日も何日もひとりで寝ていた。 やがてAちゃんの体は空気中に溶けていった。 ひとは心のバランスを崩す時がある。 そんな時はさしのべられた手に無我夢中でしがみつく。 Aちゃんには誰も手をさしのべなかった。 だからAちゃんは死を選択した。 その前に叫んでほしかった。 わめいてほしかった。助けを呼んでほしかった。 それができないなら薬に頼ってもいい。 死の選択だけは絶対駄目だ。 毎年、何人かのAちゃんが死ぬ。 どうにかならないのか。 「次のAちゃんの話は聞きたくない」 と僕の左手首の傷が呟く。
[舞太郎](1997.11.16)