Dちゃんのお母さんが上京して来た。 Dちゃんがこの業界に入ってから もう何年も絶縁状態だったが突然娘に会いに来た。 お父さんには内緒で来たようだ。 私は成り行きで Dちゃんの彼氏役を頼まれてしまった。 二人っきりで会うのが不安だったのか 母親を安心させたかったのかはわからないが、 一日限りの彼氏役である。 待ち合わせ場所にDちゃんと二人で行った。 田舎から出てきたお母さんは素朴な人だった。 Dちゃんは 「この人、業界の人じゃないんだよ。 “普通”のサラリーマンなの」と私を紹介した。 私が選ばれた理由がこの時わかったような気がした。 お母さんはやさしそうに笑って頭をさげた。 そのあと、3人で東京見物をした。楽しかった。 お母さんは私のことをどう思っていたのだろう。 ホテルの前でお母さんを降ろすと、お母さんは 「どうか、娘をよろしくお願いします」 と深ぶかと頭を下げた。 Dちゃんの方を見ると少し涙ぐんで肯いた。 帰りの車の中で、Dちゃんが言った。 「お母さん、小さくなっちゃった」
[舞太郎](1997.11.17)